CASE STUDY

メール to kintoneメール管理

3部門が繋いだ、市民の声への対応品質向上 — 水の都・三島市役所の事例

3部門が繋いだ、市民の声への対応品質向上 — 水の都・三島市役所の事例

三島市役所

業種
自治体(市役所)
ご担当者
デジタル戦略課(渡邊様) / 市民生活相談センター(野村様) 渡邊 雄介 様 / 野村 様
公開日
2026/6/2

静岡県三島市役所が、ホームページリニューアルにあわせて新設した市民問い合わせ専用フォームの受付基盤として「DataSyncer メール to kintone」を採用。

広報広聴課・デジタル戦略課・市民生活相談センターの3部門が繋いだ連携がデータ連携を可能にし、月120件以上・年2,000件規模の市民の声を50を超える担当部署へ届ける仕組みを約3ヶ月で本番運用に。

「部門連携 → データ連携 → 市民への対応品質向上」を体現した自治体DX事例です。

「ホタルもいるんですよ」

取材の冒頭、そう教えていただいた。三島駅から市役所に向かう道のりには、富士山の伏流水を源とする源兵衛川が流れています。市街地の真ん中で、初夏にはホタルが舞う——環境省の「平成の名水百選」にも選ばれた、水の都・三島の象徴的な川です。

その三島市役所が、市民問い合わせの受付基盤として採用したのが、データシンカーのメール連携機能、「DataSyncer メール to kintone」です。市民から問い合わせを kintone に自動登録し、50以上ある担当部署へ振り分ける仕組みを構築。本番運用が始まった現在、月120件以上・年2,000件規模の市民の声が、kintone を通じて毎日確実に担当部署へ届けられ、回答されています。

数ある選択肢のなかで三島市役所がデータシンカーを選んだ理由は、自治体ならではの制約を越えられる、次の3点にありました。

  • ホームページを改修せずに導入:専用フォーム本体は触らず、フォームからの通知メールを使って kintone と連携

  • 三層分離ネットワークでも導入しやすい:メールという既存のプロトコルを使うため、新たな経路設計や追加インフラが不要

  • ノーコードで短期間に本番化:相談から本番運用まで約3ヶ月

取材では、デジタル戦略課の渡邊様と、市民生活相談センターの野村様に、ホームページリニューアルを起点に立ち上がった庁舎内連携の経緯と、本番運用が始まった現在の手応えについてお伺いしました。

連携を支えた、3部門の役割分担

三島市役所では kintone を600超のアカウントで運用し、業務基盤として全庁的に活用してきました(参考: サイボウズ社による[三島市・伊豆市・伊豆の国市の3市合同DX研修レポート])

今回の取り組みは、その kintone を軸として、次の3部門が連携することで成立したものです。

- 広報広聴課: ホームページの企画・運営、市民への発信を担う

- 市民生活相談センター: 市民からの問い合わせを受け付け回答管理まで担う

- デジタル戦略課: 全庁のデジタル戦略・システム連携を推進する

市役所には五十を超える部署があり、市民からの問い合わせは内容に応じて担当がさまざまです。3部門それぞれが、自分の役割と専門性を持ち寄り、kintone を共通の基盤として仕組みをかたちにしました。

課題:人手頼みの市民の声への回答運用

今回の取り組みの出発点は、市民の声への対応品質でした。

野村様:「もともとは、ホームページに寄せられる市民の声に、いかに正確に早く回答していくか、というところからだったんです」

三島市役所に届く問い合わせは、月120件以上、年間で2,000件規模。多い日には1日20件が届くこともあります。市民の生活に直結する内容が含まれることも多く、自治体には、確実に受け付け、適切な担当部署が、適切なタイミングで回答することが求められます。

当初案は「各部門直送型」だった

ホームページのリニューアルを進めていた当初、専用フォームから届く問い合わせは、各担当課に直接メールで届ける設計が想定されていました。市民生活相談センターを経由しない、シンプルな構成です。

しかし、ここで設計の方針が問い直されることになります。

野村様:「相談センターも内容を把握しておいたほうがいいよね、と。庁内でも自然とそういう話になって、センターで受けて管理する形にしたんです」

市民生活相談センターは、受付から回答管理まで担う部門です。問い合わせがセンターを経由しなければ、対応漏れの検知も、進捗の把握も、組織として担保できません。「センターでも内容を把握しておくべき」——庁内で自然に重なったその合意が、設計の方針転換につながりました。

管理ツールの選定で迷いはありませんでした。三島市役所では既に kintone を業務基盤として広く活用しており、新しいツールを選ぶというより、自然に kintone が候補に上がります。

野村様:「じゃあツールはどうしよう、kintone がいいよね。でも、kintone に連携するには……? それで渡邊さんに相談しました」

Webフォームと kintone をどう繋ぐか

ホームページにはデザインの統一性とアクセス解析(トラッキング)が必要で、kintone プラグインのフォームツールではなく専用のWebフォームを使う必要があり、その本体仕様も自由に変更はできません。

一方で、届いたデータは kintone で一元管理したい。これまではデータをエクセルに転記する運用で対応してきましたが、確実性と回答品質を高めていくとなると、人手の運用には限界があります。Webフォームと kintone をつなぐ手段を、別途見つける必要がありました。

メールからエクセルへコピペ、部門長へも連絡

仕組みがないなかでも、市民の声への対応は止められません。野村様はこれまで、次のような運用で対応漏れを防いできました。

  • 朝一でフォームからの通知メールを全件チェック

  • 業務時間中も1時間に1回ぐらいのペースで受信確認

  • メール内容を全部確認し、題名だけエクセルに転記(本文まで転記する時間はない)して、担当課長に手動で振り分けて電話

  • その後、回答ステータスを追っかけて確認

野村様:「メールに気づかないと困るので、以前は1時間に1回ぐらいチェックしていたんです」

「対応漏れを出さないために、担当課長に電話でも確認を入れていました」

「組織として、正確に早く回答する」という出発点と、「人手の念押しで漏れを防ぐ」という現実の間に、大きなギャップが残っていました。

解決策:通知メールを kintone のインターフェースに

突破口は、ホームページの通知メールにありました。

専用フォーム本体の仕様は変えられない。しかし、フォーム送信時に市役所側へ送られる「通知メール」の本文文言は、広報広聴課で調整可能でした。

渡邊様:「ホームページのフォーム自体は変えられなかったんですが、フォームから出る通知メールの内容は調整できる。だったらここを kintone のインターフェースにしてしまえばいい、と思ったんです」

通知メール = 単なる連絡用メールではなく、kintone に構造化データを入力するためのインターフェース。この発想の転換が、本プロジェクトの設計思想の中核になりました。

「フォームを変えられない」という制約から生まれた選択は、結果的に大きな強みにつながります。連携の入口をメールにすることで、自治体に共通する三層分離ネットワークの制約とも、追加のインフラなく自然に合致する設計になりました(後段で詳述)。

その仕組みに DataSyncer メール to kintone を組み合わせ、三島市役所の3部門が連携して立ち上げたのが、今回の受付基盤です。

DataSyncer メール to kintone とは

本事例で採用された「DataSyncer メール to kintone」は、指定したメールアドレス宛に届くメールを kintone に自動登録するサービスです。

  • メール本文を構造化レコードへ: 件名・本文・送信者・添付ファイルを kintone のフィールドに自動マッピング

  • 本文解析設定: 本文中の任意のキーワードを目印に、必要な情報を該当フィールドへ抽出

メールという「プロトコル」を連携の入口にすることで、組織のネットワーク構成への依存が少なく、自治体や大企業のような環境にも自然に組み込める設計になっています。

3部門が連携して実現した、ひとつのデータの流れ

3部門の役割分担は、次のとおりです。

- 広報広聴課: ホームページフォームと通知メールの設計

- 市民生活相談センター(野村様): 受付〜回答管理の kintone アプリ開発

- デジタル戦略課(渡邊様): 連携を含む全体 IT 設計

渡邊様:「広報のフォーム文言、野村さんの kintone のフィールド設計、私のデータシンカーの解析設定——この3つがずれると、データが連携できないので三部門の連携は欠かせませんでした。」

連携の実現は、技術だけでなく、3部門が同じ仕組みの設計者として向き合うことで成立しました。

渡邊様:「現場がアプリ開発できているのが、助かります」

野村様は、YouTube も参考にしながら kintone のアプリの作り方を学び、市民生活相談センターの業務アプリを自分で内製しました。デジタル戦略課が全部を作るのではなく、現場が自走できる文化が、3部門連携の土台になっています。

フォームからの通知メールを、構造化データへ

DataSyncer メール to kintone は、指定したメールアドレス宛に届いたメールを、件名・本文・送信者・添付ファイルなどを構造化したレコードとして kintone へ自動登録するサービスです。

三島市役所の構成では、市民が専用フォームから送信した内容が、定型書式の通知メールとして当社の受信用アドレスへ届きます。データシンカーがその本文を解析し、対応する kintone のフィールドへ値を割り当てます。

解析対象として設計されたフィールドは以下のとおりです。

  • 担当部署のメールアドレス(フォーム側で設定されている)

  • ページタイトル(問い合わせ元のページ)

  • 氏名 / 住所 / 電話番号 / メールアドレス

  • 件名 / お問い合わせ内容(本文)

これにより、市民が入力した情報が、検索・絞り込み・集計の対象となる構造化データとして kintone に蓄積されていきます。「題名だけエクセル転記」とは異なり、本文も含めて全文がレコード化される構成です。

連携ポイント1: 担当課メールアドレスを「キー」に自動振り分け

今回の設計で特徴的なのは、担当課メールアドレスをキーにして担当課マスタを引き当てる運用です。フォームのカテゴリ選択に対応する担当課メールアドレスがメールヘッダー(To)に格納される構成とし、データシンカーがそれを読み取って kintone 側の担当課マスタと照らし合わせる仕組みです。

渡邊様:「ホームページのフォームに割り振り用のメールアドレスを仕込んでおくと、それがデータシンカー経由で kintone のレコードへ流れて、担当課に自動で振り分けられるんです」

市民から届いた問い合わせは、到着と同時に正しい担当課に紐づいた状態で kintone に登録されます。窓口での目視振り分けや、誤った課への転送のやり直しといった手戻りを設計レベルで予防できる構成です。

加えて、kintone 側でレコードの閲覧を担当課のみに絞る設計とすることで、セキュリティと業務効率の向上にもつながっています。

連携ポイント2:メールというプロトコルで、三層分離ネットワークを越える

自治体の情報システムは、マイナンバー利用事務系・LGWAN 系・インターネット系の三層分離が一般的です。新しい SaaS や API 連携の追加導入は、庁内承認や経路設計でハードルが高くなりがちです。

DataSyncer メール to kintone は、その課題に対する現実解でした。

渡邊様:「通信プロトコルという意味では『メール』なので、自治体特有の3層ネットワークでも、ハードルは低かったんです」

メールは、自治体業務の基本インフラとして既に確立された通信手段です。新たな専用経路を引かなくても、既存のメール経路を使うだけで連携が成立する——これが「メール to kintone」が自治体ユースで選ばれる理由でした。

導入効果:3部門が繋いだ、市民の声への対応品質向上

導入の前後で、市民の声の受付運用は次のように変わりました。

三島市役所からクラフテクスへの相談開始は2025年11月中旬、そこから約3ヶ月という短期間で本番運用に至りました。開発を伴わないノーコード前提だからこそ実現できたスピード感です。

渡邊様:「クラフテクスさんに相談を始めたのが11月中旬で、本番が2月。1月に検証して、開発期間としてはとても短いスケジュールでしたね」

3部門の合意形成のなかで難しかったのは、通知メールの形式の決定でした。

渡邊様:「ホームページからどんな文面形式で通知メールが来るのか、なかなか決まらなかったんですが、ここを抜ければ、あとはスムーズに進みました。」

渡邊様と野村様はマニュアルを活用しながら2人で設定を進められ、本番運用前後の想定外事象にもデータシンカーのサポート部門と切り分けながら対応しました。

朝の業務が「読んでいるうちに対応終わってる」に変わった

最も大きな変化は、市民生活相談センターの朝の業務でした。

野村様:「以前は朝一でメールを全部チェックして、内容に応じて各課に振り分けするのがかなりの負荷だったんですが、いまでは、読んでいるうちに対応が終わっていたりするんです——自動で割り振られるので」

野村様が手動で振り分ける前に、kintone に登録されたレコードを担当課が直接見て対応できる。「振り分け待ち」という時間そのものが、運用設計から消えました。

野村様:「月曜の朝に出勤したら、もう問い合わせ対応が終わっていることがあるんです。土日に出勤している担当課が、kintone を見て直接対応してくれていたんですね」

年間2,000件を、年12万円で

費用対効果も明確です。

渡邊様:「年間2,000件を、年12万円で処理できています。とてもコスパがいいですね」

「費用対効果を追求する」という三島市役所の姿勢にも合致した数値です。

次のステージへ:kintone の軸をもっと広げる

本番運用が始まったいま、三島市役所の視線は次のステージに向かっています。

「ステータス管理」から「市民の声のより深い分析」へ

野村様:「管理は一通りできていて、いまも分析自体はしているんですが、これからはもっと力を入れたいんです。どんな問い合わせが多いのかを把握して、市民が知りたいことがホームページですぐにわかるようにしたい。AI も活用できそうですし、ホームページの改善にもつながると思っています」

エクセル時代は題名だけしか残らず、分析の手がかりがありませんでした。kintone になって本文も含めて構造化データが蓄積される——これが分析の前提条件を満たしました。

仕組みのなかには、市民がどのページから問い合わせを送ってきたか(ページタイトル)も記録されています。問い合わせ件数の時系列推移、内容傾向、流入元ページの3軸で分析を進めれば、「市民の声を受ける」だけでなく、ホームページのコンテンツ改善まで PDCA を回せます。

AI 活用は、まだ研究段階です。

渡邊様:「AI 活用はぜひしていきたい。市民の声を反映していきたいんです。でも、まだまだ活用できていないのが正直なところで、研究中ですね」

意志は明確、現状は誠実。地に足のついた歩み方が見えてきます。同時に、デジタル戦略課の役割として、セキュリティへの目配りも欠かしません。

「AI は活用してほしいんですが、セキュリティも担保する必要があります。監査やアクセスログにも耐えうる仕組みにしたい」

対応の見守りも、仕組みで

ステータスは可視化されたものの、運用上の小さな課題も見えてきました。

野村様:「ステータス管理は便利なんですが、kintone標準の通知メールが簡素で。3日経つと通知されるんですが、メールが埋まってしまうと見逃すんですよね。何かできないかなと」

取材の場で、その課題は当社の次の製品とぴったり符合するものでした。

「— それ、NEKOTA でできます(笑)」

NEKOTA for kintone は通知文面を AI が生成し、対応が完了するまで継続的に通知するAIリマインドサービスです。市民生活相談センターの「対応漏れをゼロにする」姿勢を、人手の電話念押しから、仕組みでの見守りへと進化させる候補が見えています。

紙の声もデータ化したい — AI-OCR への期待

市民の声は、フォームやメールだけでなく、紙でも届きます。

取材の終盤、当社で開発中の「DataSyncer AI-OCR to kintone」のデモをご覧いただきました。事前のテンプレートが不要で、書類PDFを添付するだけで kintoneフィールドに項目化されて登録される仕組みに「すごい……」と驚きの声があがりました。

野村様:「紙の帳票に書かれた手書きの質問なども、管理したいんです」

「いままで AI-OCR は CSV で出てきて kintone とつながらなかったんですが、これで PDF のアップロードから kintone へのデータ化までワンストップでできそう」

「ホームページ経由からも、紙からも、市民の声を kintone で一元的に管理できる。当然、分析もできる」

kintone を軸とした3部門連携で実現した市民サービスの向上は、フォーム・メール・紙の3経路を kintone に統合する形も見えてきました。

※本文中に記載された会社名および製品名は、各社の登録商標または商標です。

AFTER THE INTERVIEW

取材を終えて

取材を通じて何度も感じたのは、3部門それぞれの専門性と責任感の重なりでした。

「相談センターも内容を把握しておいたほうがいい」——庁内で自然に重なったその合意が、当初の各部門直送案を方針転換させ、受付基盤の設計につながりました。

「現場ができているのが、助かります」——渡邊様のひと言には、デジタル戦略の担当者として、現場が自走することへの感謝が滲んでいました。野村様は YouTube なども参考にしながら kintone のアプリを独学・内製しており、その土壌が3ヶ月という短期間の本番運用を支えています。

そして広報広聴課。三島市公式ホームページで「水の都」を発信するこの部門は、市民への発信を担うと同時に、今回の取り組みでは市民の声を受ける入口(フォーム文言)も整えた部門でもあります。街の魅力を発信する手と、市民の声を受け止める手——同じ手が、両方を整えていました。

カットオーバーの日は「ドキドキで朝早く出勤した」と、笑って振り返ります。

視線は次のステージにも向いていました。もっと kintone を浸透させたい、他の自治体とコミュニティでの共有も検討していきたい——3部門が繋いだ連携が、データ連携を可能にし、市民の声への対応品質を上げた本事例の歩みは、同じ課題を抱える多くの自治体にとって、確かなヒントになるはずです。

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