CASE STUDY
CSV to kintone基幹・業務システム
基幹の生産データを30分ごとにkintoneへ反映 — トレーサビリティやラベル印刷に活用
「CSV を出すだけ、というシンプルさが良かった」AI を相棒にした内製で、kintone の使い道を広げていく。

武藤工業株式会社
- 業種
- 製造業(産業用インクジェットプリンター・設計製図機器・高精度計測/制御機器)
- ご担当者
- プロダクトセンター 情報システムチーム 主事 鮎沢 様
- 公開日
- 2026/9/8
諏訪大社のお膝元、中山道と甲州街道が交差する長野県下諏訪町。温泉宿の並ぶこの街は、いまは精密機械メーカーの集積地でもあります。その一角に、武藤工業株式会社のプロダクトセンターがあります。戦前の計測器製造に始まり、日本初の設計製図機「ドラフター」、その製図を出力するペンプロッターを経て、制御技術は現在の主力である産業用インクジェットプリンターへつながりました。国内での設計・生産による「Japan品質」を掲げ、ものづくりを続けています。
その武藤工業株式会社が今回採用したのは、「DataSyncer® CSV to kintone(データシンカー®)」です。基幹システムとして活用する生産管理ERPが持つ生産指示情報(ジョブオーダー)を30分ごとに kintone へ自動登録し、トレーサビリティとラベル発行を支える基盤を、基幹側の改修なしで実現しました。
取材では、プロダクトセンターのITシステムを担う鮎沢様に、基幹システムのデータを kintone にいかに連携させ、トレーサビリティとラベル発行の基盤に育てた道のりをお伺いしました。

kintone 導入の歩み:Excel 管理から、自分達で作れる業務アプリへ
武藤工業のプロダクトセンターでは、製造・開発・品質といった各部門のITシステムを、鮎沢様が所属する情報システムチームが支えています。kintone の導入は1年半ほど前。きっかけは、トレーサビリティやラベル印刷の元データを Excel で管理していたことでした。
鮎沢様「もともとは Excel で管理していましたが、版の管理やファイルの保管がどうしても不便でした。いくつかノーコード・ローコードのツールを試したなかで、kintone が一番使いやすく、コスト面でも良かったんです」
kintone の活用はいまも広がっている最中で、各部門から届く課題をアプリに落とし込む作業が続いています。最近は AI にアプリ構成などのアイデア出しを手伝ってもらいながら、JavaScript でのカスタマイズも含めて情報システムチームで手がけています。
課題:基幹と kintone をつなぐ、ちょうどいい方法がない
武藤工業の製造管理は、基幹システムとして活用する生産管理ERPパッケージが担っています。
製造物を「いつ・どんな部品構成で製造するか」という生産指示は、ジョブオーダーという単位で管理されています。トレーサビリティの記録も、製品に貼るラベルも、このジョブオーダーの情報がなければ作れません。kintone でジョブオーダーを扱えるようにすることが、最初の課題でした。
ここで壁になったのが、基幹システムから kintone へのデータの出し方です。
鮎沢様「ERPから CSV は出せるのですが、製品情報のカスタム項目の一部——英語の品名だけが出せませんでした。データベースから直接取ることも検討しましたが、そのためのツールは非常に高価で、やりたいことに対してオーバースペックでした」
基幹に手を入れるか、高価な接続ツールを買うか。鮎沢様は、すでに自社で活用していた BIツールの利用に活路を見出しました。
解決策:使い慣れた BI から CSV 出力をするだけ
生産管理ERPのデータベースは SQL Server。BIツールは、もともとこのデータの分析に使っていたものです。そこで BIツールの中で英語の品名をジョインし、必要な形に整えた CSV を30分ごとに自動出力することにしました。
鮎沢様「リアルタイムではありませんが、30分に一度 CSV が出力されれば運用上は十分です。ここまでくれば、データシンカーでの自動化は簡単でした。24時間365日動き続ける仕組みになっています」

社内サーバーのOS上には、データシンカーが常駐稼働しています。BIツールが監視フォルダへ CSV を出力すると、データシンカーがそのファイルを自動検知し、kintone のジョブオーダーアプリへ登録します。
同一ジョブは更新
同じジョブを含むCSVが繰り返し出力されても、データシンカー側の「フィールドマップ設定」でキー設定をしているため、レコードは常に最新の状態へ更新されます。このため基幹側の改修はゼロ、BI側のレポート定義という既存の資産に、出口を1つ足しただけで済みました。

100回/日の安定稼働
データシンカーのログアプリで実際の稼働状況も確認すると、2つの連携設定が30分間隔で交互に動き、1日あたり約100回の取り込みが自動実行されています。直近約3ヶ月では約8,000回の実行があり、エラーもなくスムーズに稼働しています。

kintone 上のジョブ情報が、3つの業務を動かす
30分ごとに最新へ更新されるジョブオーダーのレコードは、画面で見るだけの情報ではありません。武藤工業では、「ラベル発行」・「トレーサビリティ」・「3Dプリンターの製造指示ファイル管理」という3つの業務が、このレコードを軸として動いています。

・ラベル発行システム
ジョブ情報をインプットに、ブラザーの SDK で内製した仕組みがボタン一つでシリアル入りのラベルを印刷する
・トレーサビリティ
製品・部品のシリアルと製造場所を管理し、販売現場からの問い合わせにその場で答える
・3Dプリンターの製造指示ファイル管理
ジョブオーダーの番号と紐づけ、人手の紐づけミスをなくして版管理まで行う
ラベル発行システム:ブラザーのSDKで内製した「ボタン一つで印刷」
製品や保守部品に貼るラベルの発行は、kintone のジョブオーダー情報が直接のインプットになっています。この仕組みは、情報システムチームが主導して内製したものです。ブラザー工業のラベルプリンタの SDK を使い、kintone アプリ上のデータを画像に変換して、ブラウザ上でボタンを押すとラベルが印刷されます。

鮎沢様「内製なのでラベルのデザインも自由に作れますし、開発コストも大幅に下げられました」
ラベルの発行は1日あたり 2〜300枚。基幹からの CSV が30分ごとに届き続けるからこそ、印刷の元データが常に最新であることを、現場が意識せずに済んでいます。
トレーサビリティ:販売現場からの問い合わせにクイックに回答
ラベルに印刷されたシリアルが、そのままトレーサビリティの起点になります。製品のシリアルと部品のシリアル、製造場所。これらを kintone で管理できるようになり、販売現場からの問い合わせにその場で答えられるようになりました。どの出荷にどのシリアルの部品が使われたかを、遡って確認できます。
海外への出荷分を含む流通経路の確認といった場面でも、シリアルから履歴をたどれることが効いています。

3Dプリンターの製造指示ファイル:人手による紐づけ作業を排除
部品開発に使う3Dプリンターでは、製造指示の部品番号と3Dプリンターの製造指示ファイルの対応付けが人手になっており、ファイルの取り違えも起きていました。品質管理部門からのリクエストを受けて作られたのが、kintone 上の「3D製造指示ファイルのマスターアプリ」です。

仕組みは2つのアプリの組み合わせです。マスターアプリには、部品番号ごとに最新版の製造指示ファイルを添付して登録し、版管理・更新管理を行います。一方、部品のジョブオーダーは、データシンカーが30分ごとに kintone のジョブオーダーアプリへ取り込んでいます。現場の担当者は、ジョブオーダーに載った部品番号でマスターアプリを呼び出し、そこに紐づいた製造指示ファイルをダウンロードして3Dプリンターにかけます。番号で引くため、指定された版のファイルを取り違えなく使えます。
データシンカー採用の決め手:必要十分を見極めた
製品選定で鮎沢様が重視したのは、基幹システムと kintone との接続方式のシンプルさでした。
鮎沢様「CSV を出すだけで連携できる、というシンプルさが良かったですね。JDBC などで直接つなぐ方式はリアルタイム性は高まりますが、基幹と密結合になって、何かあったときの切り分けも複雑となりますので、コストもかなり高くなってしまいます」
リアルタイム連携は要らない。30分ごとに確実に届けば運用は成り立つ。この要件の見極めが、基幹の改修も高価な接続ツールも不要にし、費用と構成の両方を軽くしました。
過剰な性能に費用を払わず、必要十分な構成を選ぶ。ものづくりの原価と向き合う生産現場ならではのコスト感覚が、ツール選定にもそのまま通っています。
運用上の課題:30分ごとに溜まる処理済みファイル
取材中には、データシンカーの運用に対する課題も寄せられました。
鮎沢様「30分ごとの取り込みで、処理済みの CSV ファイルがアーカイブフォルダに溜まり続けるんです」
データシンカーは、取り込みが終わった CSV ファイルは削除せず「アーカイブフォルダ」へ移動・保管する仕様があります。ファイル名の先頭には、処理に成功すると「done-」、失敗すると「error-」が付くため、いつ・どのファイルがどう処理されたかを後から確認できます。処理の証跡として役立つ仕様ですが、30分ごとに CSV が出力される武藤工業の運用では、成功ファイルが溜まり続けます。
当初は手動で定期的に削除することも考えられていましたが、データシンカーの後続処理機能で削除バッチを起動する方式を当社がその場で提案しました。

バッチといっても、中身はアーカイブフォルダの「done-」ファイルを削除するだけです。「error-」ファイルは対象から外れるため、調査用にそのまま残ります。
REM sample
REM delete_done_csv.bat
@echo off
del /q "D:\kintone\Job_Data\Archive\done-*.csv"
これを データシンカーの設定画面で「後続処理コマンド」に指定すれば、以後はCSV登録処理が終わるたびに自動で実行されます。
導入効果まとめ
基幹にも BI にも手を入れずに生産データとの連携を実現
生産管理ERPの運用と BIツールのレポート定義はそのまま。足したのは CSV の出力とデータシンカーだけで30分ごと・24時間365日の自動取り込みを実現
販売現場からの問い合わせに即時対応
製品・部品のシリアルと製造場所を kintone で参照できるトレーサビリティを確立
ラベル発行と3Dプリンター運用のインプットに
kintone のジョブ情報を起点に、ラベルの内製印刷と製造指示ファイルの版管理まで一続きに
基幹システムの運用は変えず、出口の CSV を接点にして、kintone を現場の共有基盤にする。ジョブ情報が kintone のレコードになったことで、トレーサビリティ・ラベル発行・3Dプリンター運用という次の業務が、その上に積み上がっています。
次のステージへ:マスター系の取り込みと、グローバルでの活用
鮎沢様「品目情報などのマスター系も取り込みたいですね。基幹のデータをもっと現場で使いたいというニーズがあるので、kintone を今後の情報系プラットフォームの柱にしていきたいと考えています」
kintone のアカウントも増やしていく予定です。海外とのやり取りが増えるなかで、イントラネットではネットワークの壁がある一方、kintone ならセキュアにグローバルで使える点にも期待を寄せています。kintone はフィールド名などの多言語表示にも標準で対応しています。
AI の活用は、アプリ作りにとどまりません。取材では、帳票を AI が読み取ってkintone に登録する「DataSyncer® AI-OCR to kintone」もご紹介しました。武藤工業の調達部門では、取引先の都合もあって納期確認と納期回答をFAXにて行っているケースがあり、取引先に送り方の変更をお願いしなくても、この紙のやり取りをデータ化できそうだ——という感触を持っていただきました。
鮎沢様「各部門から来るざっくりとした課題を、kintone のアプリにどうやって落とし込むか——大変ですが、最近楽しくなってきました。AI にアイデア出しを手伝ってもらいながら、構成を考えています」
※本文中に記載された会社名および製品名は、各社の登録商標または商標です。
AFTER THE INTERVIEW
取材を終えて
取材を通して印象的だったのは、kintone に入ったジョブ情報の「使われ方」です。画面で見て終わりではありません。レコードがラベルを印刷し、部品の履歴に答え、3Dプリンターの製造指示ファイルを確実に現場へ届ける。データが物理的な作業の入力になっているからこそ、「30分ごとに確実に届く」という土台の価値が際立ちます。
その使われ方を支えているのが、生産現場ならではのコスト感覚と「できるだけ内製する」という思想です。英語の品名が出せなければ、既存の BIツールでジョインすればいい。ラベル発行は SDK で自ら作ればいい。
過剰な性能に費用を払わず、いまある道具と AI を組み合わせて、必要なものは自分たちの手で作る。データシンカーの選定も、この物差しの延長にありました。
ざっくりとした課題をアプリに落とし込むのは「大変だけど楽しい」という言葉に、この基盤のこれからが表れています。マスター系の取り込みを見据える武藤工業の kintone 活用は、これからが本番です。


