CASE STUDY
アプリ to kintoneバックアップ
kintone を使い込んだ末に気づいた「アプリコメント」を業務エビデンスとして残し続ける仕組み
「アプリコメントは、流れる会話ではなく、業務のエビデンスだった」使い込んだ kintone の上にたどり着いた、もう一つの選択。

司法書士法人NCP
- 業種
- 司法書士法人
- ご担当者
- 業務推進企画室 山下 様 / 薄田 様 / 佐藤 様
- 公開日
- 2026/6/11
「士業たるや究極のサービス業なり」を理念に、ライフエンディング分野のリーディングカンパニーとして全国22拠点を展開する司法書士法人NCP。相続手続の累計受託件数は9万件を超え、年間の取扱件数も約2万件と業界トップクラスの規模を誇ります。
その業務の中心には、いまや kintone があります。代表直下の業務推進企画室を中心に、案件管理から経営判断、組織コミュニケーションに至るまで kintone を内製で作り込み、業務基盤として深く育ててきました。
その NCP が、kintone を使い込んできた末にたどり着いたのが、日々のやり取りが自然と集まる「コメント欄」をどう扱うかという課題でした。今回採用したのは、「DataSyncer アプリ to kintone」の コメントをレコード化する機能 です。
取材では、業務推進企画室の山下様・佐藤様・薄田様に、kintone 活用の歩み、活用を深めるなかで見えてきたコメント運用の重要性、そしてデータシンカー導入の背景と展望についてお伺いしました。
相続・遺言のプロフェッショナル集団として、全国22拠点に展開
司法書士法人NCPは、遺言・相続などのライフエンディング分野に特化した司法書士・行政書士の専門家集団です。
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全国22拠点を展開(業界最多級)
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司法書士・行政書士の有資格者が延べ100名以上在籍
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グループ全体で約300名の体制
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相続手続の累計受託件数 9万件超(2024年末時点)
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年間2万件の相続案件を取り扱う、業界トップクラスの規模
「士業=先生業」ではなく「究極のサービス業」を掲げ、年中無休(年末年始除く)での相談対応など、ホスピタリティに軸足を置いた事業運営を続けてきました。
その同社で、業務基盤の中心として活用が進んでいるのが kintone です。
「ミスが許されない業務」を支える、全社DXへの挑戦
「以前は、経費精算・案件管理・タレント管理など、用途ごとに6〜7のシステムが乱立していました。システム間でのデータ転記作業が日常化していて、転記ミスも起こりやすかったんです。
相続業務は、お客様の財産と人生に関わるとても繊細な業務で、ミスは許されません。だからこそ、確実に・正確に案件を進めるための仕組みづくりが、経営の最重要テーマでした。」
その課題を解決する基盤として選ばれたのが kintone でした。
山下様:
「サイボウズの Cybozu Days に参加したときに、『kintone で全部解決できるんじゃない?』と感じたんです。代表に直談判して、業務推進企画室が立ち上がりました。最初は私一人だけの部署でした。」
業務推進企画室は 代表直下の組織として位置づけられ、その後、社内の DX を一気に押し進めていきます。「全国行脚」と呼ばれる、22拠点をひとつずつ訪問してのハンズオン浸透活動も実施。この一連の取り組みは、2024年7月開催の kintone hive Tokyo において「kintoneで全国行脚の旅」と題したプレゼンとして発表されています(同登壇内容はサイボウズ社の kintone hive 開催レポートおよび ASCII.jp の講演レポートで公開中)。
kintone を業務の中心に据えてきた、NCP の歩み
NCP は、kintone を「単なる業務システム」を超えた組織基盤へと育ててきました。取材のなかで語られた、その歩みの一部をご紹介します。
1. 業務効率と「数字の見える化」
年間約2万件の相続案件を扱う案件管理アプリでは、面談予約から請求書発行・入金確認までの全工程が kintone に一元化されています。複数システム間の転記作業が解消され、事務作業の所要時間も大幅に短縮されました。
業務効率化だけが効果ではありません。受任件数や売上などの実績は、kintone 側で毎晩自動集計される仕組みが組み込まれています。
「所員が自分の数字をいつでも確認できるようになったことで、売上に対する意識が高まりました。実際に、所員一人あたりの生産性も伸びています。さらに『数字が見られている』という前提が広がることで、入力の精度そのものも上がっていきました。」
2. 拠点稼働率を「お天気マーク☀️☁️☔️」で
業務推進企画室では、現場で直感的に伝わる仕掛けづくりも工夫されています。全国22拠点の業務稼働率を一覧できるアプリでは、どの拠点がいま忙しいのかが お天気マーク で表示されます。
山下様:
「最初は代表から『日本地図の上にお天気マークを並べたい』というリクエストだったんです。さすがにそれは勘弁してくださいって(笑)。
結果として、シンプルな一覧でお天気を表示する形に落ち着きました。いまでは拠点間の案件調整にも使われていて、忙しい拠点を別の拠点がフォローしたり、余裕のある拠点に案件を回したり。全社最適での業務配分判断が当たり前に行われています。」

3. SMS 発信も「申請承認制」のガバナンス付きで
お客様への SMS 発信 も、kintone アプリから直接行える仕組みが構築されています。kintone と外部の iPaaS を組み合わせた機能ですが、SMS はお客様に直接届くチャネル。誤った使い方をすれば信頼を損ねかねません。
そこで業務推進企画室は、SMS 機能を 誰でも使えるようにせず、事前学習を前提にした利用申請を必須にしました。申請アプリで承認を受けた人だけが SMS を発信できる──業務効率と統制を同居させる、慎重な設計です。
4. kintone ポータル - 社内のショーウィンドウへ
NCP の kintone ポータルは、季節ごとに色や意匠が更新される、社内のショーウィンドウのような存在。誰が見ても使いやすいよう、アイコンの配置までこだわって設計されたこのポータルは、佐藤様の手によるものです。
最近では、ポータルにヘルプボタンを設置して顧客対応をよりスムーズにする検証も進行中とのこと。
「問題が起きたとき、ポータルのヘルプボタンを押すと Chatwork に連携されて、管理職に知らせる、という仕組みです。まだ実験中ですが、現場の安心感をさらに高める仕掛けにしていきたいと思っています。」
5. 「目安箱アプリ」3,800レコード超の声がナレッジへ
業務推進企画室の役割は、上下双方向の結節点です。代表の意思を kintone というかたちに具現化する一方で、全国22拠点の現場からの声を吸い上げて仕組みに反映する。両方向から組織を整えていく仕事です。
その双方向のなかでも、ボトムアップの動きを象徴するのが社内の「目安箱」アプリです。
山下様:
「目安箱には、いま 3,800 件以上のレコードが集まっています。業務での違和感や改善要望にとどまらず、相続業務の最中に出てくる法律的な質問とその回答、運用上のちょっとした確認事項まで、ありとあらゆる声が流れ込んでくる。要望箱というよりは、社内ナレッジが自然に蓄積されていく場ですね。」
佐藤様:
「これをチャットではなく kintoneアプリとして全社公開しているのは、問い合わせや相談内容を特定の個人だけで抱え込まないためです。
個人チャットでのやり取りは、その場の当事者しか状況を把握できず、対応履歴や検討経緯も属人化しやすくなります。
kintone上で一元管理することで、対応可能なメンバー全員が状況をキャッチアップでき、担当者が一人に集中することを防げます。
また、複数部署で判断が必要な内容や改善検討事項についても、そのまま会議・相談へつなげやすく、対応スピードと情報共有の両立につながっています。」
6. 全拠点をつなぐ「組織のコミュニケーション基盤」
北海道から熊本まで、全国22拠点に社員が散らばっている NCP では、拠点を越えたコミュニケーションをどう作るかが長年の課題でした。
薄田様:
「会社の部活動の報告を kintone に用意したら、拠点間のやりとりが一気に活性化しました。日々の部活動の交流は kintone スペースのスレッドで行われていて、写真もふんだんに投稿される、いわば社内SNSのようになっています。
投稿数が多いんですけど……実は、活動したら投稿することを義務化してるんです(笑)」
少人数で運営している地方拠点の社員からすると、それまではなかなか接点のなかった他拠点メンバーの表情やパーソナリティまでが、スレッド越しに自然と伝わってくる。物理的な距離が組織の一体感を阻む壁にならない仕組みが、kintone の上に育っています。

現場からの提案という「導入フェーズ2」へ
導入当初は、業務推進企画室がトップダウンで kintone のアプリを作って届けるスタイルが中心でした。ところが、ここ1年ほどで状況が明確に変わってきています。
「いま、私たちのkintone導入はフェーズ2に入ったと感じています。kintone の仕組みを現場の管理職が理解してきた上で、『こんなアプリが作りたい』『この業務をこう変えたい』と提案してくれる。さらに踏み込んで『一緒に作りたい』と声をかけてくれる現場も増えてきました。」
山下様:
「業務推進企画室自身も成長していて、当初は『言われたものを作る』ことが中心でしたが、いまは現場の声を一段深く咀嚼して、業務現場で本当に必要なものは何かを自分たちで判断できるようになってきました。
新しいアプリの使い方説明会さえも、いまでは現場主導で開かれ始めています。」
その動きの根底にあるのは、現場が kintone に確かな価値を感じてくれていることだと、山下様は語ります。
課題:使い込んだ末に気づいた「コメント」というエビデンスの重さ
業務効率化、ガバナンス、社内ナレッジ、組織コミュニケーション──kintone がここまで深く業務に根ざしてくると、業務推進企画室の前にひとつの「気づき」が浮かび上がってきました。
それが、kintone の「コメント機能」の使われ方でした。
設計当初、業務推進企画室は「kintone のコメントはバックアップできないもの」という前提で運用を組み立てていました。重要な情報はテーブルやフィールドを用意して残す方針です。
ところが、現場の動きはその設計を超えていきました。
山下様:
「所員からすると、コメントの方が気軽に使えるんですね。レコードを開いて編集して保存するより、ずっと手軽に残せるので。
案件管理アプリのレコードのコメント欄に、関係者間のやり取り、確認事項、承認の意思表示、進捗連絡などがどんどん書き込まれていきました。」
設計の意図を越えて、現場の自然な行動として、コメント欄に業務情報が集まっていったのです。やがて業務推進企画室は、この事実に対して一つの認識に至ります。
これは単なる会話ログではない。コメントには「いつ・誰が・何を承認したか」が記録されており、社内的な業務エビデンスとして機能している。
司法書士法人にとって、案件処理の判断履歴・確認履歴は、後から問い合わせ・トラブル対応・監査の場面で参照される性質の情報です。コメント一つひとつが、組織として残し続けるべき記録になっていたのです。
しかし、kintone の標準コメント機能は、スレッド形式で時系列に流れていく設計です。手軽に書ける一方で、検索性・集計性は高くありません。さらに、アプリを廃止すればコメントも一緒に失われてしまう、という課題も抱えていました。
山下様:
「コメントの手軽さは、手放したくないんです。でも、大事な情報が構造化されないまま流れていくのは不安でした。」
業務基盤として kintone を使い切ってきたからこそ、見えてきた次の課題。それは、現場の自然な行動から生まれた業務エビデンスを、組織としてどう残し続けるかという問いでした。
解決策:DataSyncer アプリ to kintoneで「コメントをレコードへ変換」
その課題を解決する仕組みとして、業務推進企画室が採用したのが「DataSyncer アプリ to kintone」の コメントをレコードへ自動変換する機能 でした。
コメントが構造化レコードに変わる
これは、kintone レコードのコメント欄に投稿された内容を、別のアプリのレコードとして定期的自動的に登録する機能です。投稿日時・投稿者・コメント本文がそれぞれフィールドに分かれた状態でレコード化されるため、これまで「流れる会話」だったコメントが、絞り込み・検索・集計の対象になります。

山下様:
「いつ、誰が、何を言ったのか。そのままだとスレッドのなかに埋もれていたものが、レコードとして残ることで構造化される。社内的なエビデンスとして、確実に追える形になるのは大きいです。」
関連レコードで複数アプリを横断参照
レコード化されたコメントは、kintone の関連レコード機能で元のレコードと紐づけて表示できます。複数のアプリにまたがって使われていたコメントを横断的にレコード化しておけば、他のアプリのレコードからも、そのコメント履歴を辿ることが可能。組織のあらゆる業務エビデンスを、一つの集約された場所で串刺しに検索・参照できる構造が立ち上がります。
アプリ廃止時のアーカイブとしても
佐藤様:
「使わなくなったアプリを廃止するときも、コメントも残しておきたい、というケースがあるんです。レコード化しておけば、そのアプリを廃止しても、エビデンスとしてのコメントは別アプリで生き続けます。万一に備えたバックアップとしても安心ですね。」
業務エビデンスの構造化と、業務継続性のためのバックアップ。コメントの「書きやすさ」と、レコードの「残しやすさ」。両方を諦めずに済む選択肢が、ここで初めて成立しました。
導入効果まとめ
DataSyncer アプリ to kintone の「コメントをレコード化する機能」導入により、NCP では次の効果が得られています。
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業務エビデンスの構造化: 「いつ・誰が・何を承認したか」がレコード単位で残り、検索・集計・関連参照が可能に
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アプリ廃止時のアーカイブ: 使わなくなったアプリを廃止しても、そこに蓄積されたコメントは別アプリにレコードとして退避できる
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業務継続性の担保: 万一に備えたバックアップとしても機能し、業務知見が失われるリスクを軽減
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「コメントの手軽さ」と「記録の構造性」の両立: 現場の運用を変えずに、組織として残すべき情報を確実に残せる仕組みが整った
業務の中心に kintone を据え続けた組織が、その積み重ねの末に出会った課題と、その解にたどり着いた選択。それが今回の事例です。
次のステージへ:AI 活用と「もう一度 kintone hive」
取材の終盤、話題は次のステージに向かいました。
山下様:
「業務推進企画室では、いま AI 活用についても模索を始めています。AI もまだ練習中で、プロンプトも勉強しながら手探りでやっています。」
その流れで取材の最後にご紹介させていただいたのが、現在当社で開発中の「DataSyncer AI-OCR to kintone」のデモでした。
テンプレートを事前に作らなくても、PDFの書類を貼るだけで kintone に項目化されて登録されていく仕組みに、デモを見た瞬間、業務推進企画室のメンバーから感嘆の声が上がりました。
「『添付ファイル』って、事前に型を定義するんですか?」
「定義しないで大丈夫です。位置情報も不要です」
「へーー、すごい」
「しかも、書類を手で添付する必要すらありません。メールに添付されてきた書類や、Windows のフォルダに置かれた書類も、そのまま自動で取り込んで AI-OCR にかけられます」
「いいですねー」

DataSyncer AI-OCR の特徴は、専用のテンプレートを別途定義する必要がないことにあります。kintone アプリ側のフィールド定義そのものがテンプレートの役割を果たし、書類のなかから該当する項目を自動で抽出して、対応するフィールドに値が入っていく。OCR ツールと kintone の間を行き来する手間が、根本から不要になります。
業界共通の難所「財産目録」への適用イメージ
相続案件には、亡くなった方の財産を漏れなく一覧化する「財産目録」の作成という、業界全体に共通する必須業務があります。各金融機関から残高証明書や明細書はいまも紙で送られてくることが多く、フォーマットも金融機関ごとにバラバラ。エクセルに転記し、財産目録を作る作業は相続業務でもっとも手間がかかる工程の一つです。
山下様:
「書類1枚 → 1レコード → 複数レコードを集約 → 財産目録。DataSyncer AI-OCR と kintone のアプリ構造を組み合わせれば、相続業務作業を、現場のフローを変えずにそのままデジタル化していける──そんな絵姿が、取材の場で具体的に共有されました。
AI 時代に向けた「データが集まっている」という資産
山下様:
「データが kintone に集まっている──そんな実感があります。これまで業務の中心に kintone を据えてきたことが、これから訪れる AI 時代の最も貴重な資産になる気がしています。
kintone の活用が新しい段階に入ってきたので、また kintone hive のような場で、お話しできる機会があれば挑戦したいです。私たちの取り組みが、なかなか kintone が現場に浸透しなくて悩んでいる会社の、ヒントになれば嬉しいですね。」
「コメントをエビデンスとして残す」という一つの選択から、AI 時代の業務基盤づくりまで。NCP の歩みは、kintone を業務の中央に据えた組織にとっての、次の一手を示しているように感じられました。

※本文中に記載された会社名および製品名は、各社の登録商標または商標です。
AFTER THE INTERVIEW
取材を終えて
取材を通じて何度も感じたのは、「現場を信頼している組織」の強さでした。
代表直下の業務推進企画室が、トップの自由な発想を kintone のかたちに翻訳し、同時に全国22拠点の声を仕組みに織り込んでいく。「日本地図の上にお天気マークを並べたい」という代表のアイデアに対して、「さすがにそれは勘弁してください(笑)」と笑い合いながら、より良い実装に着地させていく対話。そのプロセスにこそ、NCP のスピードと品質を両立させる組織文化が現れていました。
そして印象的だったのは、コメント機能との向き合い方です。当初の運用設計では、コメントを業務エビデンスとして使うつもりはなかったと山下様は率直に振り返ります。それでも現場が自然にコメントを使い込み始めた事実を尊重して、「手放してほしくないし、失いたくない」という両立を、データシンカー アプリ to kintone のレコード化機能で実現する。設計の意図より、現場の行動を信じる。 その姿勢が、kintone を業務の中央に据え続けてきた NCP の DX 観そのものだと感じました。
NCP の歩みは、kintone が現場に浸透しなくて悩んでいる多くの会社にとって、確かなヒントになるはずです。

